ヘッジファンドvs.投資信託

ヘッジファンドと投資信託は似て非なるものであり、比較するのは意味がない。

 
Photo by Frank Busch via Unsplash

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日本では2005年から2012年にかけて、和製ヘッジファンドが多数立ち上がりましたが、ほとんどの運用戦略が日本株ロング・ショートでした。それ以外には、イベント・ドリブン、アクティビスト・ファンドなど(アクティビスト・ファンドとはどの様な戦略なのかは違う記事でご紹介します)の戦略もありましたが、基本的には、投資対象は日本株式でした。日本では、日本株式戦略がヘッジファンドの大半を占めます。為替、マクロ戦略が日本に少ないのは、それらの戦略は日本のみならず海外の動向に精通する必要がありますが、英語で情報を入手するには言葉が壁になり情報量が制限されてしまうからです。また、債券ファンドが少ないのは、流動性や債券の種類、発行件数が少ないからだと言えるでしょう。

 

テレビなどで見るヘッジファンドは、なぜかハゲタカファンドのイメージが強く、それほど一般的ではないアクティビスト・ファンド戦略が代表格となっています。実際のヘッジファンドは株式運用がメインです。マイナス・リターンを出すこともありますが、株式投資信託の戦略ではほとんど見られないショートのポジションを持つ(ポジションをヘッジする)ため、マイナス幅は限定的になります。

 

 

では、ヘッジファンドと投資信託は何が違うのか?大きく分けると二つあります。(1)構造:公募対私募(2)収益の見方:絶対リターン対インデックス比較リターン

 

公募の投資信託は、それを取り扱う証券会社や銀行で購入可能です。私募であるヘッジファンドは特定の証券会社で購入可能な場合もありますが、ヘッジファンド会社からの直接の購入が一般的となります。それ以外、構造的にも法律的にも様々な規制がありますが、規制対象は日本では買い手よりも売り手、すなわち投資家よりもファンド側となるので、ここでは詳しい説明を割愛します。法律上で日本の投資家が知っておく必要がある制約は、買い手は「適格投資家」でなければならないと言うことのみです。

 

収益性、収益の見方とではどう違うのでしょうか?。運用収益の基本は、ファンドの収益率%であり、投資信託であろうとヘッジファンドであろうと、ファンド運用者の手腕によります。しかし、収益の見せ方が違うことで、数字が違ってきます。ヘッジファンドは、基本的にフィー・手数料を差し引いたリターンで表示します。投資信託は、申し込み手数料などが別途差し引かれますが、それは収益からは引かれていません。よって、本当の収益が知りたい場合、単純に百円投資したら、それぞれいくら戻ってきたのかを見る事です。

 

良く言われるのは、ヘッジファンドのフィーの高さですが、最終リターンに注目するべきだと考えます。ヘッジファンドのフィー形態はシンプルで、運用手数料(運用資産の1-5%)及び成功報酬(運用益の15-30%)です。ヘッジファンドのパフォーマンスは、フィーを全て引いた後のリターンを常に表示します。高いフィーを課したうえでリターンが悪かったら、投資家がファンドを解約してしまうだけなので、ファンドのコストに対する規制はゆるいものです。ヘッジファンドはabsolute『絶対』リターンの世界です。結果はプラスかマイナスか、数字の大小のみで判断されます。

 

ヘッジファンドにはヘッジファンドの、投資信託には投資信託の良さがあります。規制面で見たら、投資信託の方が投資家にとっては有利です。リターンだけを見れば、ヘッジファンドに分があります。このふたつを比較するのは、似て非なるものであり、実は意味がない事だと思います。

 
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