ヘッジファンド特有リスク

リスクとは、「事故」が起きる可能性をさしているのだとしたら、思っていた時に思っていたように起こらない事がリスクなのでしょうか。

 
Image by Maxim Hopman via Unsplash

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リスクと言う言葉は、乱発され過ぎてリスクの意味が不明になってきています。金融市場にてリスクと言ったら、みなさん何を考えますか?株価が下がる事ですか?乱高下が激しい事ですか?数字ですか?リスクとは目に見えないものと言う人もいます。皆さんは、何をリスクと考えますか?

リスクとは、「事故」が起きる可能性をさして言うのでしたら、思っていた時に思っていたようなに起こらない事を指すのではないでしょうか。しかし、事故が起きてしまった後に考えると、実は起きるべくして起きた理由がある事だったりしませんか?マーケットも同じです。2020年のコロナも今後経済にどのような「リスク」があるのか分からないと考えている人も多かったと思います。しかし、実際には、家から出られなくなった為に損失が拡大、あるいは倒産の可能性がある企業の株価が下がり、結果大暴落となったのでしょう。今となったら、この下落は納得のいくものではありませんか?これをマーケットリスクと呼ぶのでしょうか。

 

では、ここでヘッジファンドへの投資リスクとは何かに目を向けてみましょう。リーマン倒産、マードフ詐欺事件、様々な理由による株式市場の暴落場面を経験し、ヘッジファンドのデューデリジェンス・プロセスが大幅に強化されました。ポートフォリオのポジションと投資プロセス双方の透明性、オペレーションに関するデューデリジェンス(プライムブローカーでの資産の保管方法を含む)、およびサービス・プロバイダーの品質などが向上しました。よって、それ以外の場面でのリスクを大雑把に4つ挙げてみます。

⒈      運営失敗・倒産

⒉      時間

⒊      行政・規制

⒋      持続性・継続性

会社運営失敗・倒産リスク

大手ヘッジファンドも含め、基本ヘッジファンド会社は、中小企業がほとんどです。ヘッジファンドは、特別なビジネスではなく、投資信託や投資顧問会社と同じ投資会社です。ヘッジファンドが倒産するか、大手投資会社に成長するかは、ファンドのリターンのみならず、会社経営も重要な要素になります。良い商品を開発しても売れなければ会社は危機に陥りますし、利益率の観点から見ても、運用資産の割に、オフィスが大きすぎたり、顧客が数社・数人しかいなかったり、社員の出入りが激しかったり等一般企業と同じように失敗する要因がいくらでもあります。私が見ているヘッジファンドは、資産を1千億円運用していても社員が50〜70人程度です。ある意味、オフィスはビルのワンフロアくらいです。リターンが良いのは当たり前として、他に何を見るべきなのか、ヘッジファンド だからと言って、特別の目で見ないで、会社として見る必要もあるのではないでしょうか。

            時間のリスク

お金と時間が永遠にあれば、リターンなんてどうでもいいのではないでしょうか。例えば、ウォーレンバフェ氏を例に挙げると、始まりはともかくとして、彼は何十年も前に我々の何百倍の投資資金を投資してリターンを上げてきました。そう言う人には時間リスクは少ないのです。自分の老後、あるいは今後10年をターゲットにしているのでしたら、安定的に3―5%のプラスを出してくれるヘッジファンド のみへの投資では追いつかないのです。1千万円、1億円の5%なんて、何年積み上げればいいのでしょうか?ましては、その様な5%リターンのファンドでさえ2008年、2020年に二桁近くのマイナスを出して、一気にリターンをなくす可能性は否定できないからです。本当のリターンを知りたいのでしたら、いつどのタイミングで投資し、どの位の期間投資しているかの検証が必要となります。今日の資産額から、投資した金額を引いて、何年投資したかで割れば、一年でいくら儲けたのかはっきりわかります。100円投資して、10年経って、倍になったとしても、それは投資として成功なんでしょうか。何年投資したかで必ず割ってみてください。10年なんて、経って仕舞えばあっというまかもしれません、そしてそれが時間のリスクです。

            行政・規制

これは特に説明は入らないかと思いますが、日本では思ったより大きなリスクです。海外の金融局と日本の大きな違いは、海外(ここでは、アメリカとシンガポールを指します)では規制が白黒はっきりしているのに対して、日本では曖昧なところがあります。行政処分はどこの国でも起こります。検査に入った場合、運用がストップしてしまいます。そして、長引けば、ポートフォリオが痛み、結局、投資資金を回収できず、回収できた頃には半分になってしまったり、ならなくてもその間は運用できず縛られてしまう可能性もあります。行政処分の対象になってしまった時我々は、何もできません。だからこそ、これが多分一番大きなリスクです。ただし、行政リスクが一番高かったインサイダートレーディングが減少した今日この頃はちょっと安心かもしれません。

継続性

一番大切な事は運用責任者の運用に対する姿勢ではないでしょうか。ヘッジファンド で成功するのは並大抵のことではありません。なぜなら、一年良いリターンが出たとしても、次の年マイナスであれば、その次の年は回復するだけではなく、それ以上にリターンを出さなければならないからです。例えば1年目に−50%のリターンを出してしまったとすると、100円が50円になってしまっているので、2年目+50%のリターンが出せたとしても、50円の50%のプラスでは75円、100%出して50円が100円になったとしても、0年にリセットされただけとなります。その状況が何年も続くわけです。毎日、毎日マーケットは開いています。毎日マーケットは上がったり下がったりします。リターンを出さないと会社は潰れます。継続できなければそれで終わります。ヘッジファンドの平均寿命は5年と言われています。1年目からヘッジファンドに投資するケースは少なく、せめて3年以上立ったファンドに投資するのが一般的と考えた場合、投資して2年で解散・閉店してしまう確率が高いのです。持続性の有無をどう見い出すのか?運用戦略の継続性が大きなポイントとなります。

ヘッジファンド投資への色々なリスクを挙げてみましたが、何がリスクかと言う点も含め、リスクは時代とともに変化していきます。何故なら、リスクとわかった時点で、ファンド側も管理体制をしっかり取ることでそのリスクを回避するからです。それでもリスクは存在し、起こってしまったとき、悪い結果が生じてしまいます。リスクへの最良の対策は、一か八かではならなく想像力を働かせ、リスク回避するために必要な行動をとることではないでしょうか?

 
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