ゲームオーバー: 投資家は何年にもわたって広範な利益を上げた後、新しいモデルを探す

株式と債券の高騰により、資産運用会社は今後の長期リターン確保の方法を模索している

 

Image by Sigmund via Unsplash

 

1985年にデービッド・スウェンセンがイエール大学の基金で革命的な投資手法を考え出してからすでに30年以上の時間が経過し、この厳しい投資環境下、投資家は次の投資アイデアを模索しています。 


債券市場の上昇が利回りを押し下げた今、ヨーロッパのジャンク債の利回りでさえ、10 年前の米国の 10 年国債の利回りを下回っています。この結果、ポートフォリオの要となる債券が、この先株が暴落した場合に十分な受け皿とはならなくなってしまうのです。一方、株式市場は現在、多くの国で高騰し、これ以上の上昇余地はなくなっています。


「金利の下落は、株式・債券の強気相場のエンジンでした。 40年間負けない。 でも、その試合はもう終わってしまったら、どうする?」 パートナーズ・ キャピタルの会長である Stan Miranda氏 はこのように述べています。そしてこれは現在、多くの投資家にとっての疑問点でもありますが、また答えが出ていません。 しかし、カナダの年金基金が新しい手法として大規模な投資に対する「社内DIYアプローチ」を開拓してきました。


過去のバリュエーションとリターンに基づいて、従来のアセット・アロケーションを株式60%、債券40%とし、インフレ率を加味した今後5-10年のポートフォリオの年間リターンは+2.1%となります。 1900 年以降の平均でほぼ 5% だったのに対し、米国では+1.4% という悲惨な結果になります。


1980 年代に、スウェンセンは、イェール大学のような機関にとって 60 / 40 のポートフォリオは間違っているとの認識を示しました。 なぜなら、長期的視野があり、償還リスクがなく、何年にもわたって投資資金をロックアップすることができる投資家は、より短期的なボラティリティに耐えることができ、安全で低利回りの債券は無用であると考えたからです。その考えを前提にスウェンセンは債券から株式投資への比率を徐々に増やし、それ以外にも、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、ヘッジファンド、さらには森林地帯へとより積極的な投資先に数十億ドルを投じました。そして、過去 30 年間、 イエール大学の基金では12% 以上の平均年間利益を確保しました。


スウェンセンのイェール大学モデルに多くの投資家が賛同しましたが、成功したのは少数でした。イェール大学の資産配分を模倣することは理論上は簡単ですが、スウェンセンの「秘密のレシピ」は、アウトパフォームできるマネーマネージャーを発掘し、早期に投資する能力でした。 しかし、最近では一流のヘッジファンドの多くが新規投資を受け付けておらず、業界最高のベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ企業はファンドのサイズに上限を設けています。


このようなかつては先駆的だったものが今では当たり前になっています。 National Association of College and University Business Officers によると、平均的な米国の財団・基金は現在、土地やインフラなどの代替資産や「実物資産」に半分以上の資金を投資しています。 20 年前は 10% 未満であったこの資産クラスへの資産配分の移行は増加を続けています。 ハーバード大学基金の元責任者であるモハメド・エル・エリアン氏は、「ほとんどの投資家が株や債券市場の暗い見通しに対抗するため、代替資産への割り当てを増やしている」、 「これらの戦略が人気を集める理由は、レバレッジを使用したことを示すことなくレバレッジを使用できるためです。それは、レバレッジがファンド自体の中にあるためです」と発言しています。しかし、この分野への投資がこれ以上増加することに懸念している投資家もおり、代わりに、「イェール・モデル」の次のステップはカナダ風になるのではないかと考える向きがあります。


カナダのいくつかの年金基金では、プライベート・エクイティ・ファンドを パートナーとして、あるいはインハウスで、企業やインフラ・プロジェクトを直接購入するための大きな社内投資チームを構築しています。 社内チームは費用がかかる場合がありますが、プライベート エクイティによって課される高額なフィーほど高くはありません。


結果は良好で、推定によると、カナダの 5 つの最大規模の年金基金は、過去 10 年間で平均約 10% の年間収益を上げており、これはイェール大学の業績に匹敵し、米国の基金の平均の 7.3% を大きく上回っています。


しかし、このカナダ・モデルを模倣するには投資判断をする社内チームが必要であり、経験豊富で最高の能力を持つのスタッフを引き付けるには、高い水準の給与が必要となるなど様々なハードルが出てくるでしょう。


「神は細部に宿る」と言います。一見すると単純に見えるかもしれませんが、予想以上に時間と労力がかかるという意味です。本当に素晴らしい技術は目に見えないことなのかもしれません。

 
 
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