大手銀行のトレーディング業務を奪う新興企業:上

かつてはゴールドマン・サックスをはじめとする投資銀行がリードしたトレーディングの世界。金融市場の電子化が進む中、より機敏でより柔軟な戦略を取るジェーン・ストリートやシタデル・セキュリティーズといったトレーディング企業が銀行からそのシェアを奪っている。他にもサスケハナ・インターナショナル・グループ、XTXマーケッツ、DRWといったトレーディング企業の台頭が顕著だ。

シカゴを拠点とするジュネーブ・トレーディングのロブ・クリーマーは、「投資銀行は、電子取引が生み出す効率性が最終的にトレーディングの支配的勢力になることを理解していなかった。彼らといえば今まで通り電話を使った取引で儲けることを優先し、電子取引の可能性を見誤ったのだ。」と言う。

独立系トレーディング企業はアルゴリズムを使って、株式やオプションの売り手と買い手を気の遠くなるようなスピードでマッチングさせる。今や世界中のほとんどすべての市場と地域で主要な役割を担う存在になりつつある。

ジェーン・ストリートによるとシタデル・セキュリティーズは、現在20カ国以上で全取引の2%以上を占めているという。昨年は630億ドル相当の上場ファンドとオプションを取引し、想定元本は320億ドルだった。2024年上半期のトレーディング収益はジェーン・ストリートで合計84億ドル、シタデル・セキュリティーズで50億ドル弱となり、いずれも前年同期比で約80%増加したと予想される。

シタデルのパフォーマンスについてはこちらを参照:『偉大なファンドマネージャーたち』

トレーディング企業とその業務領域

各トレーディング企業のやり方は「秘密主義的」と言われているが、彼らの主張によれば技術革新がトレーディングをより公正で透明なものにしたという。

しかし、伝統的な投資銀行よりもテクノロジーに特化したトレーディング企業の台頭は、新たな課題を突きつけているのは事実だろう。シタデルや他の大手トレーディング企業が何をしているのかをもっとよく理解できれば、そのリスクに合わせた規制はどうあるべきか十分な議論ができるはずだが、それは今のところかなわないことなのだ。

投資銀行は長い間、トレーディング・テクノロジー競争において不利な立場に置かれてきた。新興トレーディング企業の多くは、コンピューターを使った電子取引が台頭してきた2000年前後に設立された。金融市場が電子化に向けて大きく推進されたのは、2007年に制定された国内市場制度規制(Regulation National Market System、Reg NMS)と呼ばれる規則がきっかけだった。

これにより、マイケル・ルイスのベストセラー『フラッシュ・ボーイズ』にも登場するような、膨大な数の取引から小銭単位の利益を上げることができる高頻度取引業者、現代のマーケット・メーカーが誕生することになったのだ。

記事(外部サイト)

https://www.ft.com/content/9439108d-4fe3-4fc2-b040-da9412f1ba0b

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