不安定な市場の影響で、投資チームのアウトソーシングOCIOブーム

より多くの年金基金や財団が、外部のマネーマネージャーに手綱を委ねている

 
Image by Sebastian Herrmann via Unsplash

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投資チームのアウトソーシングは、今、「最新トレンド」となっており、数十億ドル規模の資産運用を外部のマネーマネージャーに委ねるケースが増えている。大規模な企業年金や公的年金、基金、財団などは、通常、内部に投資部門を持ち、特定のマンデートのみを外部のマネーマネージャーに委託していた。しかし、投資チームを雇うほどの余力を持たない中小機関は、マーサーなどの投資コンサルタントやブラックロックなどの資産運用会社に運用全体を委託することが多く、専門の「外部委託投資最高責任者 Outsourced Chief Investment Officer(OCIO)」が存在する。

 

投資環境がますます厳しくなる中で、これら専門家に一部資金の運用委託の移行を行なってる大手の機関投資家もあり、OCIO業界は現在、規模と範囲を拡大している。OCIO事業を展開する資産運用会社、ラッセル・インベストメントのチーフ・エグゼクティブ、ミッシェル・ザイツ氏は、「今が旬、この分野は、業界で最も急速に成長している」と述べている。

 

業界誌「Pension & Investments」が毎年行っている調査によると、2020年3月末までに、OCIOが全資産あるいは、部分運用している額は、世界全体で約2兆円に達し、2013年の業界規模の約2倍にもなっている。

 

Cerulli Associatesによると、米国におけるOCIOのマンデートの半分以上は1億ドル未満のものであり、ラッセル・インベストメントによると、資産100億ドル未満の機関投資家のうち76%は、投資活動をアウトソースしていない。したがって、この業界にはまだ成長の余地が十分にあり、最近では100億ドル以上の委託案件が相次いでおり、OCIOの大型化の傾向が加速すると予想される。

 

ブラックロックの最高経営責任者であるラリー・フィンク氏は、同社の最近の決算説明会で、「アウトソーシング化の傾向はますます加速するだろう」と述べ、さらに「規制の強化、運用コストの上昇、投資の複雑化に伴い、ポートフォリオ全体をアウトソースしようとする顧客が増えている」とも話した。ブラックロックは先日、ブリティッシュ・エアウェイズの年金から300億ドル相当の運用管理OCIO業務を受注した。これは英国最大の案件であり、フィンク氏はこれが「業界にさらなる変革をもたらす要因になる」と予測する。

 

ゴールドマン・サックスの社長兼最高執行責任者(COO)であるジョン・ウォルドロン氏も最近、同社の資産運用部門でも、OCIOサービスに対する「非常に強力な」パイプラインがあると述べている。

 

現在のマーケット環境のように全体的にバリュエーションが高い状態では、今後10年間のリターン予想がますます厳しくなっていることが、大きな要因の一つだという。市場が活況を呈していることで、世界的に資産運用資金自体が膨張しているて一方で、先行きが不透明であることから、投資管理を専門家に委託する傾向が強くなっている。投資グループAQRは、市場の評価とその後のリターンの長期的なパターンに基づいて、株式60%、債券40%で構成される伝統的なポートフォリオが今後5年から10年の間に、インフレ後で年率2.1%のリターンになると予測している。ジェレミー・グランサム氏が設立した資産運用会社であるGMOは、さらに弱気な見方をしている。現在の市場の盛り上がりを考えると、新興市場の一部の株式を除くすべての主要な資産クラスは、今後7年間で実質的に損失を被ると予測している。

 

100億ドル以上の資産を保有する金融機関の大半は、社内に投資チームを置いて運用しているが、アウトソーシングを全面的に受け入れる傾向が強まっていることから、この状況は変わっていくだろうと業界幹部は指摘してする。そして、公的な退職金制度や財団、大学の基金などでも、OCIOの採用を検討するところが増えてきているととも指摘する。

 

業界誌『Chief Investment Officer』が2020年に行った調査によると、OCIOを利用する主な理由は、「社内リソースの不足」と「より良いリスク管理」だという。「本業が運用ではない会社では、機会を最大限に生かすために必要なツールを社内に備えていない 」とラッセル・インベストメントのザイツ氏は言う。「低金利の環境下では、長期負債の返済を確実に行うことがより複雑になっています。」

 
 
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