ヘッジファンド人気の再到来か?

このままETFやインデックスファンドで市場の波に乗ってリターンを取り続けられるのか?

 
Image by Jasper Boer via Unsplash

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コロナ禍における中央銀行の金融政策のもと、ヘッジファンドと比較してフィーが最小限のETFやインデックスファンドは、多くの資金を集めリターンを弾き出してきました。他方、調査データ会社、ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、市場が混乱した2020年のヘッジファンド平均リターンは+11.8%、2009年の金融危機後以来では最高の成績を確保しました。年初来では概ね+10%、上半期ベースでは過去20年で最高となっています。世界の株式市場の+13%には見劣りしますが、株価バリュエーションは記録的なレベルを超えており、アナリストの多くが、この上昇相場が続くとは考えていません。

 

ヘッジファンドは、株式以外でも運用していることもあり、投資家はヘッジファンド復活に注目しているのは確かです。 HFRによると、2021年上半期には184億ドルを新規に投資、業界全体の運用資産は、4兆ドルを超えるまでに膨れ上がっています。

 

コロナ禍で市場が混乱する中で、ヘッジファンドは、中銀の政策に抗うのではなく、むしろ波に乗ることを学び、企業による株式取引の拡大、債券の流れなど、さまざまな市場トレンドに十分な投資機会を見出しています。慈善団体や財団の運用を手がけるCommonfundの責任者、Mark Anson氏は、「ヘッジファンドは、ほぼすべての戦略で、2桁プラスの大幅リターンを記録しました。これには、多くの人々が注目しています」と。同氏は、ヘッジファンド1990年代の全盛期に戻るとは考えていないものの、「銀の時代」の到来の可能性があると考えています。Strategic Value Partersの創設者Victor Khosla氏は、「ここ10年の低迷期を経て、ヘッジファンドは今、明らかに好調期にあります。 しかし、この流れが根本的に変わったかどうか、次の10年、見ていく必要があります」と述べています。

 

直近のヘッジファンド復活の流れを象徴するとも言えるファンドの一つに、ブレバン・ハワード社があげられます。かつて約400億ドル相当の資産を管理し、「マクロ」戦略のゴールド・スタンダードと見なされていました。2003年のローンチから2013年まで、そのメインファンドは金融危機にも、マイナスを記録した年はありませんでした。その後、創設者の多くが去り、パフォーマンスは悪化し資金が流出し、 2018年の運用資産は60億ドルにまで減少しました。しかし、元最高リスク責任者のアロン・ランディ氏のリーダーシップの下で、目覚ましい回復を遂げました。その理由は、基本的な運用基盤を、スター・マネージャー文化から才能のあるマネージャーに移行したことにあります。また、ファンドへのアクセスも容易になり、投資家は、トップマネージャーがどのように考えているかをポッドキャストやウェブナーで知ることができます。もちろん、最も重要なことは、リターンの回復です。ある投資家によると、ブレバンのメインファンドは過去3年のうち2年で、2桁の利益を上げており、投資家は戻りはじめ、資産は160億ドルにまで復活しています。

 

ブレバン・ハワードのようなグローバル・マクロ・ファンドは、コロナ禍での金融の混乱でプラス・リターンを確保した勝者の一例です。ある投資家は、ここ10年を生き延びてきたヘッジファンドの多くが優れた存在で、事実上殆どのファンドが高リーンを期してる、と指摘しています。イタリアの保険会社の資産運用部門であるゼネラリ・インベストメンツの最高経営責任者、カルロ・トラバットーニ氏も、次のように述べています。 「少しクリーンアップされました。より大きく、より効率的なファンドのみが残っています」。

 

ヘッジファンドのフィーの高さも、過去10年間で改善されています。一般的に2%の年間管理費と成功報酬の20%が、現在では、それぞれ平均1.38パーセントと15.9パーセントとなってます。しかし、パフォーマンスの向上は、フィーの低下よりも大きな推進力となっています。データグループPivotalPathの分析によると、40のヘッジファンド戦略のうち38は、市場全体の動きだけでなく、マネージャーのスキルによって収益を上げてきました。このマネージャーのスキルは一般的に「アルファ」と呼ばれヘッジファンドにとっては貴重な資産であり、投資家には一番のセールスポイントです。

 

多くのアナリストやファンドマネジャーは、パッシブなインデックス・ファンドを介してマーケットを上手く乗り切るだけでは今後無理だと考えてます。投資グループのAQR Capital Managementが過去の評価パターンに基づいて予測しているように、株式と債券の典型的なバランスの取れたポートフォリオが、今後5〜10年のインフレ調整後のリターンが年間2.1%しか上げられない中、7〜8%必要とする年金基金や生命保険会社は、好成績をもたらすファンドマネージャーを見出す必要があると感じています。今後の運用資金割当について、今年下半期にはマン・グループを去る予定のラトレイ氏は、「ヘッジファンドへの割り当てを増やす以外に選択肢はない」、と述べています。

 

しかし、ヘッジファンドに再び興味を持つ投資家が直面する最大の課題は、一つです。ミレニアム、ツーシグマ、DEショー、シタデルなど、長期的にプラスの結果をもたらしたトッププレーヤーのほとんどすべてが新規顧客に閉ざされたままであるという事実が、まさに課題です。 これらのファンドは、資産の増加は管理手数料の増加に等しい反面、資産の機敏性を低下させることでパフォーマンスを損なう可能性があると考えているからです。これまで成功してきたヘッジファンドは、資金を集めればいいというビジネスモデルはもう終わったのではないでしょうか。

 
 
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